マルチタスクではなくシングルタスクで、生産性を飛躍的に高める

マルチタスクからの脱却で、生産性が飛躍的に向上 ビジネススキル

ビジネスの世界でよく使われる「マルチタスク」という言葉。

複数の仕事を同時にこなしている人は優秀というイメージを持たれがちですが、実はマルチタスクでは業務の効率はむしろシングルタスクよりも低下しており、さらにマルチタスクを続けることで、脳にダメージを与えることが最近の研究でわかってきました。

今回はマルチタスクから脱却し、シングルタスクで業務の成果を上げる具体的方法を紹介していきたいと思います。

マルチタスクとは

マルチタスクはもともとコンピューター世界で使われていた用語で、二つ以上のプログラムを、1台のコンピューター内で見かけ上同時に実行することを言います。

そこから近年では、私たちビジネスマンなどが2つ以上の仕事を同時にこなすこともマルチタスクと呼ぶようになりました。

ビジネスにおけるマルチタスク

ビジネスにおけるマルチタスク

多忙なビジネスマンにとって、マルチタスクの状態は業務中に頻繁に発生しています。

会議で意見交換しながら手元で別の作業を行ったり、メールやドキュメント類の作成中に同僚の質問や電話に対応したり。

このように別々の作業を同時に行う機会は、日常でも頻繁に生じます。

複数の作業を同時に率なくこなしている人は、同僚や後輩から「同時に2つのことができるなんてすごい!」「仕事の効率がよさそうな人だなあ」と尊敬の目を向けられる場合があることでしょう。周囲はこのような人を「マルチタスク能力がある」と称賛することになります。

しかしこれって、本当に効率よく仕事をこなしていることになるのでしょうか?

人間の脳はマルチタスクに向いていない

実は人間の脳は元来、マルチタスク処理を行えるようにはできていません。

いや人間の脳だけではなくそもそもコンピューターでさえ、マルチタスクをできているわけではないのです。

コンピューターがマルチタスクをしているように見えるのは、OSやアプリケーションがCPUを短時間で高速に切り替えているだけの話。そのため複数のタスクを同時に処理しているように見えているのです。

コンピューターは、プログラムコードを逐次処理することしかできず、1つのタスクを順番に実行する。そのため、厳密にはまったく同時には複数のタスクを処理できないが、OSが複数のタスクを細かく分割し、素早く切り替えながら高速に実行することで、あたかも複数のタスクが同時実行されているように見えているのである。

IT用語辞典 大塚商会「マルチタスク」

人間の脳もコンピューターと同じで、実は厳密なマルチタスク処理は行えません。

マルチタスクをこなしているように見える人も、そのほとんどは実際には「素早くタスクを切り替えながら処理することで、あたかも複数のタスクを同時にこなしているように見えている」だけなのです。

そして一部の例外を除いて一般的に、複数のタスクを切り替えながら処理をすると、そのスピードや正確性は大幅に落ちることがわかっています。

同時作業が得意な「2%の超人類」

マルチタスクの処理に優れる「スーパー・タスカー」が、人口全体の2%存在しており、彼らの脳は「普通の人たち」とは明確に異なっているという。

WIRED JAPAN

そして恐ろしいことに、このように複数のタスクを頻繁に切り替えながら作業を行うことは人間の脳にマイナスの影響を及ぼすことが、最近の研究によりわかってきました。

マルチタスクによる脳への悪影響

マルチタスクによる脳への悪影響

強いストレスが集中力を妨げる

脳はマルチタスクが苦手で、本質的にマルチタスクはできないともいえます。無理に複数の作業をこなす(こなしているような行動をとる)ことを続けていると、脳内でストレスホルモンのコルチゾールが増えていきます。

慢性的なストレスによって過剰分泌されたコルチゾールが脳内に溢れると、海馬の神経細胞が破壊され、海馬が萎縮することがわかっています。海馬の委縮は学習能力の低下につながります。

さらに近年の研究によって、ストレスは脳の大脳皮質前頭前野という部分に影響を与え、精神機能を奪う可能性があることが判明しました。マルチタスクによる高ストレスに晒されてれていると、うつ病やPTSDの発症リスクが高まると言えるのです。

中毒性がある

メールの送受信やツイートの投稿など小さなタスクを繰り返すと、脳内で報酬ホルモンであるドーパミンが放出されます。脳はこのドーパミンが大好きなので、簡単に満足感を与えてくれる、些細なタスクを行い続けてしまいます。メール受信のポップアップが表示されると、会議やほかの業務に集中しているときでさえも、気になって内容を確認せずにはいられなくなるということは多くの人が経験していることと思います。

IQの低下をもたらす

ロンドン大学が、千人以上のビジネスマンを対象に、マルチタスクが与える影響を調査しました。方法は、マルチタスクをしている人に認識力テストを実施して、被験者のIQを図るというものです。その結果、PCやスマートフォンなどの電子機器を使ったマルチタスクをすると、一時的にIQが下がることが明らかになりました。その数値はなんと、マルチタスクをする成人男性でIQが15点ほど下がり、これはマリファナを吸うときや徹夜をしたときより顕著な低下とのことです。

マルチタスクは習慣化しやすい

日常業務が多忙を極めてくると、電話やメールや同僚の相談、会議の準備に、取引業者の問い合わせ対応…とやるべきことが山積してきます。そうなるとついついマルチタスクで業務に取り掛かり、自分自身では素早く業務をこなしているような錯覚に陥るかもしれません。

マルチタスクは中毒性もあり、いったん習慣になるとなかなか抜け出すことが出来ません。

それに私たち自身や周囲の同僚も、複数のタスクを同時に処理して忙しくしている人は「仕事ができる」といった錯覚を起こしてしまうことや、本人も1つのタスクに飽きたらすぐ手を止めて他のことに手を付けることができるので、無意識のうちに楽な方へ逃げやすくなることと関係しているかもしれません。

しかしそのような業務の進め方は、実際には、集中力や思考力低下の状態に陥り生産性が低下しているだけではなく、脳に取り返しのつかないダメージを与えているかもしれないのです。

シングルタスクで生産性を高めよう

シングルタスクで生産性を高めよう

このように中毒性も高くて危険であり、かつ生産性も上がらないマルチタスク「もどき」は百害あって一利なし。このような状態を改善するには、「タスクの切り替え回数を少なくする」ことを意識するのがとても大切になります。

同時に複数のタスクを処理しようなどとは考えず、目の前のひとつのタスクに集中できる環境を整えることを心がけましょう。

次に、マルチタスクが習慣になっているビジネスマンが、無理なくシングルタスクへ移行するための方法を、具体的に紹介したいと思います。

シングルタスクのためのスケジュールを立てる

スケジュール管理のコツとして、ひとつひとつの業務に取り掛かる時間を、スケジュール表に書き出してみましょう。たとえば「9:00-9:30メールチェック」、「9:30-10:00会議資料準備」といったように、その時間に取り掛かるべき業務を一つだけスケジュールに明示し、それを必ず守るように意識するのがコツです。

一つのタスクは30分から60分程度に区切る

集中力はそう長く続くものではなく、せいぜい90分が限界と言われています。大学の授業が90分単位なのもそのためです。また集中力には波があり、1周期は15分間ともいわれています。

一方、我々が抱えている仕事は全てが90分以内で終わるとは限りません。したがって長時間かかることが予想される業務はあらかじめいくつかの細かいタスクに分けておき、集中力維持を勘案したスケジュールを立てることが大切です。

意図的に空白時間を作っておく

業務時間内のスケジュールは、びっしりと詰め込まないようにしましょう。

空白時間をあらかじめ空けておき、急な案件や打ち合わせ等が入った時にはできるだけ仕掛案件を中断せずに、空白時間に対応するように調整すると良いでしょう。

スケジュール管理ツールは1つに絞る

スケジュール管理ソフトやアプリから手帳まで、スケジュール管理にはいくつかのツールが考えられます。一方、スケジュールが複数のツールに分散していると便利なようですが、いろんなメディアを開く癖がついてしまうと、集中力の低下につながることがあります。

複数メディア使用している人も、自動でデータの同期を取る仕組みを利用するなど工夫をして、少なくとも業務中は一つのメディアのみを確認するような習慣をつけましょう。

なおスケジュール管理が苦手な人や、いろんなものに気が散ってしまいがちな人は、なるべくローテクなもの(手帳など)を利用することをお勧めします。

無関係の資料は視界の外へ置く

机の上にいろいろなタスクの資料が置いてあったり、PCのデスクトップにソフトが開きっぱなしで放置されていると、どうしてもそれらに目が行き、集中力が分散します。

そのような状況に陥らないためには、今取り組んでいるタスクに関係ない資料は視界に入ってこないように、タスク開始時点で準備をしてから取り組むことが大切です。

もちろん携帯電話も、可能ならば視界の外に置いておくことをお勧めします。

メールを見る時間をあらかじめ決める

メールチェックはできるだけ早い方が良いという考え方もありますが、集中力維持の面からは、いつでも即座にメール対応することはあまりお勧めできません。

メールチェックとその返信こそが、私たちの集中力と業務時間を奪う最大の要因のひとつであることを意識したほうが良いでしょう。

メールをチェックするタイミングについて、例えば朝の始業前と、昼食後と、修行30分前の1日3回といった具合に、自分の中でルールを決めておくとよいでしょう。

割り込み案件はパーキングロットへ退避する

急な案件や打ち合わせ等が入った場合に、優先順位を検討して空白時間に対処すればよいと判断された場合は、手帳やホワイトボードなどにメモをしておく習慣をつけましょう。メモをしないとどうしてもそちらに注意が分散し、仕掛タスクへの集中力が低下してしまいます。一時退避の場所を自分で決めておき、割り込み案件はそこにメモをして一旦忘れるといった流れを習慣づけると、安心して目の前のタスクに集中できるようになります。このように目の前の案件をいったん退避させておくことをパーキングロット(駐車場)と言います。

まとめ

割り込み案件を回避する

ビジネスで成功を収めるためには、限られた時間で効率よく業務をこなすかが重要です。集中力の低い状態で長い時間PCの前にいても成果が出ないのは当然のこと。できるだけ集中力を持続して効率良く業務をこなしましょう。

そのためにお勧めする効果的な方法が、じつは「タスクの切り替え回数を少なくすること」なのです。

またシングルタスクでひとつひとつの業務に集中し、着実に終わらせてから次へ進む習慣を身に着けると、業務の生産性が向上するだけでなく、日々小さなタスクを完了させることで達成感を得られ、そのことが次の業務へのモチベーションアップにもつながります。

忙しいと嘆いている方ほど、シングルタスクの仕事術を早く身に着けて、効率よく業務をこなしていってください。

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