ダニング=クルーガー効果とは?

ダニング=クルーガー効果 チームマネジメント
ダニング=クルーガー効果とは? zensala

あなたの周りに、仕事ができないにも関わらず何故か自分のスキルや能力に関して自信満々な人、いませんか?

ダニング=クルーガー効果とは「能力が不足している人ほど過大な自己評価を抱いてしまう」という認知バイアスの一つです。能力が低い人ほど自分の実力を過大に見積もる傾向があるため、誰でもこのような状況に陥っていないか自己をふりかえる必要があるかもしれません。

今回は実力と自己評価の関係を示した、ダニング=クルーガー効果と呼ばれる心理現象と、このような状況に陥っている部下をうまく指導する上司の心得を解説します。

ダニング=クルーガー効果とは

男性の顔写真

ダニング=クルーガー効果とは能力の低い人物が、自らの容姿や発言・行動などについて実際よりも高い評価を行ってしまう、「優越の錯覚」 を生み出す認知バイアスのことです。

ダニング=クルーガー効果は、米国コーネル大学のデイヴィッド・ダニングとジャスティン・クルーガーによって定義されました。二人の論文は、2000年のイグノーベル賞(ノーベル賞のパロディーで、人々を笑わせ、考えさせる業績に与えられる賞)で心理学賞を受賞しました。

彼らは学生を対象に研究を行いました。テストを受けてもらった後に、彼らに自分の点数はどのくらいか予想してもらうという内容です。その結果、好成績を出した学生は自分の能力を適正な値かまたは点数を過小に見積もったのに対し、実際のテストの点数が低い学生ほど過大に点数を見積もる傾向があったのです。つまり成績が低い学生ほど、実際よりも自分の能力を高く評価していたということが分かったのです。

口は達者だが仕事を与えてみたらイマイチな人、分かったつもりになり人の話を全く聞かない人など、あなたの職場にもこのような人はいませんか。実は彼らもこの心理現象に陥っている可能性があります。

ダニング=クルーガー曲線
ダニング=クルーガー曲線 zensala

上のグラフは縦軸が「自信」、横軸が「経験(実際の実力)」を表しています。
ここから以下の3点を推察することができます。

 1.   実際の能力が低いほど自分を実際よりも過大評価してしまう
 2.   能力が上がってゆくにつれ、自分を実際よりも過小評価してしまう
 3.   能力が成熟してゆくにつれ、自信と実際のバランスが安定していく

やたら自信満々で偉そうな態度をとる新人が入社してきたとき、「なんだこいつ、何にもできないくせに態度だけは偉そうだな・・・」と感じてついイライラすることがあっても、ダニング=クルーガー効果を知っていればひとつの「現象」として理解することができ、冷静に対処することができるでしょう。

ダニング=クルーガー効果が起きる原因について

考えている横顔

では次に、ダニング氏とクルーガー氏が立てた仮説から、その原因を見てみましょう。

物事の原因を「誰かのせい」にしている

ダニング=クルーガー効果に陥りやすい人物傾向として、「外的要因」に注目しがちだという傾向があります。

外的要因とはつまり、「誰かのせい」「他の何かのせい」です。

わざわざ「自分のせい」として必要以上に悩むことはありませんが、「もっと自分にもできたこと・もっとよくできることは無いか」という視点を持てば、効果に陥ることを防ぐことができるかもしれません。

他人の能力を正しく評価することができない

自己評価の高さは、他人の能力との相対的な比較の上に成り立ちます。

しかし多くの場合、他人の能力を正しく評価するのはとても難しいことです。

他人への誤った評価をもとに、相対的に自分を高く見積もってしまわないように「他人への評価とはそもそも難しいものだ」という認識を持つ必要があります。

また、他人との評価比較の際には「定量的な評価」を元に行えば誤った判断をしづらい環境を作ることができます。

フィードバックを受けない

フィードバックを受けないことは、ダニング=クルーガー効果を促進してしまう要因になります。

積極的に否定的な意見を取り入れるのは難しいものですが、かといって肯定的な意見ばかり取り入れていても先に進めないことがあります。

「よかった点」「もっとよくできる点」の2点でフィードバックを受けるよう心掛けると良いかもしれません。

ダニング=クルーガー効果を理解して部下の育成に生かす

考えている後ろ姿

ダニング=クルーガー効果は必ずしも誰しもが陥る認知バイアスと言えますが、決して悪いことばかりではありません。では、あなたの部下がこのような状況に陥っているとき、上司であるあなたはどのように部下にっせすればよいと思いますか?

自信満々すぎる部下への対応

自信満々で鼻持ちならない新人は、その分野を覚えたてで、根拠もなく「自分がすごいやつだ」と思っている状態にあります。

チャレンジさせる

自信満々の部下は自分の実力を過信して、ポジティブな状態になっています。

そんな時あなたは、その実力を存分に発揮できるようなチャレンジの場を提供してみてはどうでしょうか。もちろん上手くいかないことが予想されますが、一度、どこまでできるかを試させてみるのです。

失敗したらフィードバックする

失敗しても、ざまぁみろなどと考えてはいけません。そんな時に、上司であるあなたは失敗の理由、良かった点をきちんとフィードバックしてあげてください。新人もそのような経験を重ねることで、自分が無知であったことに次第に気づいていくでしょう。その経験を積ませることこそがとても大切な成長の糧となるのです。

それまであなたは注意深く見守り、失敗したらいつでもフォローできるように心構えをしておきましょう。

自信を無くして消極的になっている部下への対応

多くの経験や知識を身に付け、状況を冷静にみられるようになってくると、自分に自信がなくなり、「自分なんて・・・」と仕事への取り組み姿勢も消極的になってくる中堅社員がいるものです。

消極的な人には小さな成功体験を用意する

失敗を経験して落ち込んでいる人を立ち直らせるには、「成功体験」が必要です。どんなに小さくてもいいので、その人の実力で達成できるチャレンジを用意してあげましょう。

成功を積み重ねれば、「このレベルなら自分でもできるんだ」と、自分の本来の実力を理解します。自己評価と実力が一致して、少しずつ自信を取り戻していきます。

その結果、自分に足りないものが何かをさらに深く理解できるので、ますます自己成長するようになります。

まとめ

小さな木の芽も大切に育てる

孔子は「真の知識は、自分の無知さを知ることである」と語り、ソクラテスは「無知の知」を語っています。つまりはるか昔から変わらず、私たち人間はこのような心理状況に陥りやすい傾向があることは知られていたのです。

あなたの周りにもこのような人がいないか、また、いた場合はどのように接して彼ら彼女らの成長を促すか。それこそ上司であるあなたの力の見せ所です。

天狗になったり、逆に自信を無くしている若手を、うまく導き成長を促してあげる。それがあなたのマネジメント能力の一つでもあるのです。

今回は、心理学より「ダニング=クルーガー効果」を紹介しました。

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