あなたは、「アナロジー思考」をご存じですか?
アナロジーとは「類推」を意味する言葉で、アナロジー思考は類推思考とも言われます。
アナロジー思考は、
①具体的な事象を抽象化したうえで、
②異なる事象や概念の間に共通点や類似点を見出し、
③そこから新しい視点やアイディアを導き出す思考方法です。
つまり、一つの事象や概念から別の事象や概念への「類推」を行うことで、問題解決やアイデアの発想を行う思考法といえるのです。
また、頭が良い人はアナロジー思考が得意な人とも言われています。
今回は、アナロジー思考について理解を深め、頭の良い人の発想法を身に付けましょう。
アナロジー思考の具体例
アナロジー思考は身近な日常のさまざまなシーンで活用できます。まずは身近で分かりやすい例を2つ挙げてみましょう。
料理のレシピ
新しいレシピを考える際に、他の料理や食材の組み合わせ、調理方法を参考にすることで、新たな料理のアイデアが生まれることがあります。
たとえば、異なる料理の味付けや調理技法を組み合わせることなど。これもアナロジー思考と言えます。
クリエイティブなデザイン
クリエイティブなデザインの分野では、他の分野やまったく別のものを参考にして新たなデザインを生み出すことがあります。
たとえば、自然界の美しいパターンや構造をもとに、オリジナルデザインを生み出すこと。これもアナロジー思考です。
わかりやすく単純な例を挙げてみました。
ここでは「既存の具体的知識から共通点を見出して抽象化し、他の分野に応用する」といった一連のイメージをつかんでもらえれば結構です。
アナロジー思考が、頭の良い人の考え方といわれる理由
では、なぜアナロジー思考が頭の良い人の考え方といわれるのでしょうか。
それは、頭が良いと言われる人の思考方法と、アナロジー思考には驚くほど共通点が多いからです。
逆に言うと、アナロジー思考を理解しマスターすれば、頭が良い人の思考方法に近づくことができるのです。
ではここで、「頭が良い人」とは具体的にどのような人のことを指すのか考え、そのこととアナロジー思考との共通点を確認してみましょう。
既知のアイディアにとらわれず自由な発想ができる
頭の良い人は創造的な思考を持ち、柔軟な発想ができる傾向があります。
アナロジー思考は、既知のパターンやアイデアにとらわれず、異なる組み合わせやアプローチを探求することが求められます。
自由な発想が得意で、枠にとらわれない意識を持つ人は、アナロジー思考が得意な人といえます。
豊富な知識や経験を生かして類推することができる
頭の良い人は異なる分野にわたる情報を習得することができ、広範な知識を持ちます。
アナロジー思考では異なる分野や経験からの知識や経験を活用し、そこからさまざまなアナロジーを見つけ出し、それを自身の思考に結びつけることが大切です。
つまり、広範な知識や経験を持つ人は、アナロジー思考が得意な人なのです
複雑な課題を分解、整理して抽象化することができる
頭の良い人は複雑に絡み合う高度な問題に直面した場合に、その状況を分析し、抽象化して考えることができます。
アナロジー思考は、具体的な事象を抽象化したうえで、類似の事象との共通点を見つけ出し、そこから具体的な課題への解決策を導き出す考え方です。
つまり複雑な課題を分解、整理して抽象化することができる人、そのような人はアナロジー思考が得意な人といえるのです。
アナロジー思考をビジネスに生かす
アナロジー思考は、創造性や柔軟性、問題解決能力を促進し、広範な知識や経験を活用する能力を要求します。
頭の良い人はこれらの能力を備えており、アナロジー思考を通じて、さらに効果的な思考と行動を展開することができるのです。
しかし頭が良い人に限らず、アナロジー思考の仕組みを正しく理解して習慣化することができれば誰でも、ビジネスシーンにおいて、頭の良い人と同じような発想方法を自分のものにすることができるのです。
次に、ビジネスシーンのどのような場面でアナロジー思考を生かすことができるのか、PBL(Problem Based Learning)形式でわかりやすく具体例を挙げてみたいと思います。
課題:チームのコミュニケーションがうまくいかない
アナロジー(類推): スポーツチームのコミュニケーションや連携の仕組みを参考にする。
チームスポーツでは、共通の目標に向かってコミュニケーションや連携が重要であり、役割分担やフィードバックの循環をビジネスチームに応用することで、コミュニケーションの改善を促す。
課題:顧客ニーズに対応する新たな商品のアイディアが浮かばない
アナロジー(類推): 他の産業や分野の類似のニーズに対する解決策を参考にする。
他の産業や分野で類似の課題に対して取り組んだアイデアを発見し、それを自社の商品に応用することで、新たな解決策やアイデアを生み出す。
課題:ブランドの知名度を向上させたい
アナロジー(類推): 成功した他のブランドのマーケティング戦略を参考にする。
他の成功したブランドのマーケティング戦略やキャンペーンを分析し、それらの要素を自社の戦略に組み込むことで、自社製品の知名度を向上させることができる。
これまで見てきた通り、アナロジー思考は、異なる事象や概念の間に共通点や類似性を見出し、それを基に問題解決やアイデア発想を行う思考プロセスです。
問題解決やアイデア発想においては、他の事例や分野からのアナロジーを見つけることで、創造的な解決策やアイデアを導き出すことができるケースが多いので、アナロジー思考は大変有効な手法といえます。
アナロジー思考と真似(パクリ)の違い
アナロジー思考は創造性を促進し、新たな視点やアイデアを生み出す思考法です。アナロジー(類推)を用いて他分野との類似性を洞察し、それを自身の創造的なプロセスに活かすのです。
一方、他社の真似(パクリ)は既存のアイデアや作品をそのまま模倣したり、無断でコピーしたりする行為を指します。パクリは既存のアイデアや作品を模倣するため、オリジナリティが欠如し、創造性に欠ける行為です。
アナロジー思考は創造性を促進し、新たなアイデアや解決策を見つけるための思考プロセスです。一方、パクリは既存のアイデアや作品を模倣する行為であり、オリジナリティや創造性はほとんどありません。
もちろんパクリは法的・倫理的な問題を引き起こす可能性があるため、その面からも推奨できません。
アナロジー思考の注意点
アナロジー思考は、異なる事象や概念の共通点を見つけることに基づいていますが、類似性があるからといって必ずしも全ての面で同じ結果が得られるわけではありません。
また、アナロジー思考は事象や概念を抽象化し、他分野との類似性に着目しますが、現実の問題や課題は複雑で多面的なものですあるため、アナロジー思考だけに頼ると、現実の複雑さや特殊性を無視してしまう可能性があります。
そして、間違った類推を用いると、誤った結論や解決策を導いてしまう可能性があるため、十分に注意が必要です。
アナロジー思考だけに頼らず、他の思考方法や手法と組み合わせることで、より効果的な問題解決や創造的なアイデア発想が可能になるということを忘れないようにしましょう。