従来のインセンティブ制度とは異なる、新しい形の成果給「ピアボーナス」制度。
評価指標のひとつとしてグーグルが導入していることでも知られており、日本でも注目を集めています。
今回はそんなピアボーナスについて、その意味や注目の背景、メリット・デメリットなどを解説したいと思います。
ピアボーナスとは?
ピアボーナスとは、英語の「仲間」や「同僚」を意味するPeer(ピア)と、「成果給」や「特別手当」を意味するBonus(ボーナス) が1つになった言葉で、仕事の成果やチームへの貢献に対して、従業員同士が互いに少額の報酬を送り合う仕組みのことを表します。
ピアボーナスはインセンティブ制度のひとつですが、従来のインセンティブ制度と異なる点があります。
まず、従来の評価制度では評価しにくい仕事の成果や貢献に対して、プラスの評価をできる点です。
次に同僚や上司、部下、他部署のメンバー360度評価を受けることが出来ます。
そして最後に、フィードバックを半期や1年といった企業の評価スパンに合わせる必要がないため、期間をあけずに相手に伝えることが可能です。
そのため従来型の制度よりも、社員のモチベーションやエンゲージメント(愛着心)向上に役立つものとして期待されています。
注目されるようになった背景
AIやIoTの進展により労働環境には大きな変化が起こりつつあります。また労働者不足やダイバーシティの進展により、多様な価値観を持った労働者が共に働く機会が増えつつあります。
このような変化に対し企業は、柔軟に対応できる組織を維持しそのパフォーマンスを高めるため、人材開発やスタッフコミュニケーションの強化に一層の力を入れるようになりました。
そのひとつとして企業は、多面的で客観性、公平性の高い評価制度の実現に力を入れています。
そんななか、グーグルがピアボーナス制度を導入したこともあり、近年その認知は高まりました。
グーグルはプロジェクトアリストテレスという研究を行い、その中で「心理的安全性」の高さがチームの生産性に大きく関与しているということを発表しました。心理的安全性とはチームの中で誰にどのようなことを言っても、無知・無能だと思われたり、また拒絶されたりペナルティを与えられたりといった不安を感じることがない状況を言います。
グーグルはこの心理的安全性を高める方策の一つとして、ピアボーナスを導入しているのです。
心理的安全性|生産性が高くて強いチームを作るためのキーワード (salarymanpp.net)
ピアボーナス導入のメリット
ピアボーナスを導入すると、企業にはどのようなメリットがあるのか、いくつかの具体的を見ていきましょう。
部署を超えたコミュニケーションが活発になる
1つ目は、従業員同士のコミュニケーションが活発になることです。
従業員同士が賞賛と報酬を互いに送り合うということは、従業員同士に互いの興味関心が高まり、ポジティブなコミュニケーションを生み出します。ほかの人やほかの部署の業務にも関心を持つことは、部署を超えた関係構築を生み出します。
なおグーグルでは、直属の上司と直属の部下にはピアボーナスを送ることはできないとされています。
会社の雰囲気や社内風土がポジティブになる
2つ目は、社内の雰囲気や社内風土がポジティブに変化するということです。
ピアボーナスは、従来の成果主義とは異なり、数値化が難しい裏方の業務にも光を当てることができます。さらにどんなことが周囲から評価されるのか、評価軸が可視化されることで、周囲の人間も良い例を参考に自らの取り組みを見直すことができます。
そのことで価値の再認識が進み、社内にポジティブなムードが生まれるのです。
社員のエンゲージメントを高め、優秀な人材獲得につながる
3つ目は、エンゲージメント(愛着心)が高まり、それにより離職率の低下や求職者への魅力増を生み出すということです。
ピアボーナスにより同僚たちからの賞賛と報酬を受け取ると、従来型の上司からの一方通行の評価制度と比べて、より高いレベルで承認欲求を満たすことが出きます。このことは、永続的な愛社精神の高まりにつながり、離職率低下を抑制する効果があります。さらに言えば、ヘッドハンティングを受けるような優秀な社員の流出をも防ぐことにもつながります。
また社員のエンゲージメントを高め話題性のある評価制度の導入が、企業の新たな魅力となり、優秀な新規人材獲得の機会を増すことにもつながります。
導入にあたり注意すべき点
ここまで良い点についてお話をしてきましたが、その導入に当たってはいくつか注意すべき点もあります。つぎにそれらを見てみたいと思います。
システム導入のコスト
ピアボーナスを運用するためのシステムはいくつか提供されていますが、その導入にはコストがかかります。また直接、金銭や商品券などを報酬としてやり取りする際には、その原資も必要となります。
自社に合ったシステムか
賞賛のプロセスが面倒だったり、使いにくいツールだったりすると制度が形骸化してしまいます。また報酬も、金銭や商品券、社内ポイントや褒賞のみなどさまざまな方法があります。社員の誰もが使いやすくて、自社の業務に合った仕組みをあらかじめ検討することが必要と言えるでしょう。
導入後のチェックが必要
ポイント稼ぎだけに注力する社員が評価され、裏方で活躍しているような人が評価されていない状況などに注意を払い、社内のコミュニケーション向上に効果を発揮しているか、導入後も定期的な確認が必要です。
まとめ
いかがでしょうか?
社員同士が取り組みに対して報酬を与えあうピアボーナス制度は、管理職や人事では認識しにくい現場の細かい点を評価できるのが特長です。
制度の導入により、従業員同士のコミュニケーションが活発になることで組織が活性化し企業の成長につながることから、多くの企業で広がりつつあることがお分かりいただけたと思います。
あなたの会社でも、コミュニケーションを円滑にし、人材の採用や定着を強化するための施策の一つとして検討してみてはいかがでしょうか。