40歳定年という言葉を聞いたことがありますか?
40歳で定年?と驚く方もいるかもしれません。40歳でリタイア出来たら最高!なんてときめく人もいるかもしれません。
果たしてこの言葉の意味するところはどこにあるのでしょうか。
今回は40歳定年という言葉から、私たちが人生100年時代を賢く生き抜くヒントを学んでみたいと思います。
人生100年時代の到来、やがて定年は70歳に
■国の方針は?
日本では、少子高齢化の進行により労働力不足が進んでいます。
そのため若年層以外の労働力、つまり高齢者の雇用を確保することで人手不足を解消することが国の方針となっており、そのための制度は着々と整備されつつあります。
まず年金制度を見てみましょう。
公的年金の受給開始年齢はすでに65歳に引き上げられています。
また厚生年金の受給開始年齢は段階的に引き上げられ、2025年4月からは男性は65歳となります。
つまり年金制度上では、65歳までは現役の労働力世代とみなされているのです。
企業の定年制度についてはどうでしょうか。
企業の定年は1980年代前半までは55歳定年が当たり前でした。その後引き上げられ、つい最近までは60歳という時代が長く続いていました。
しかし年金制度の変更により生じた「年金がもらえない空白期間を埋める」という名目で、定年についても実質的な引き上げの手続きがすでに進んでいます。
具体的には高年齢者雇用安定法の一部が改正され、2025年度には65歳までの雇用確保が完全に義務付けられることになります。
さらに
働き盛りである30代や40代の世代が65歳を迎えるころには、企業の定年は70歳まで引き上げられているだろうと予想されています。
これらをみてもはっきりしていますが、社会を支える働き手・現役世代の人口減少が確実視されるなか、日本政府は国民に対して「元気な人は早期リタイアなんて考えずに、いくつになってもしっかり働いて社会を支えてください」という大方針にもとづいて、制度の整備を進めているのです。
■ 働く側の事情は?
終身雇用と年功序列は既に古いシステムとなりつつありますが、それでも日本企業の多くでは、年齢が上がれば一般的に給与はアップします。
最近では役職定年制度が採用されているケースも増えていますが、その年齢は55歳というのが一般的です。
つまり少なくとも55歳までは、長く勤務すればするほど給与が上がるわけです。
これは労働者にとって大変ありがたいことです。
家族を持ち、ある程度の年齢になれば子どもの教育費や住宅ローンなど、出費はかさんできます。
そんなとき将来の給与アップが確実であれば、明るい将来像を描き、教育や老後に関しての人生設計が立てやすくなるでしょう。将来の見通しが立てば、労働意欲も沸くというものです。
中には、早期リタイアを実現する勝ち組サラリーマンもいますが、現実的には少数派です。
さらにコロナ不況にあえぐ日本と世界の経済には、今後もさらに厳しく悲観的な予想が建てられています。
そんな状況から、安定した職場でできるだけ給与水準を下げずに、可能な限り長く働き続けたいと考えるのが、私たちサラリーマンの大多数の意見といえるでしょう。
■ 企業の本音は?
全ての労働者が年齢と共に着実にスキルアップを達成し続けていくのであれば、雇用する側にとって何も問題はありません。
そのような社員ばかりならば、年齢に応じた給与アップをして、いつまでも長く勤務してほしいと考えることでしょう。
しかし現実は、そうとばかりは限りません。
若手の頃はバリバリのエースだったけれど管理職になったらパッとしない社員や、華やかな経歴を持ち即戦力として期待されながら入社したミドル社員が実はいまひとつだとかいう事例は、実に良く聞く話です。
そもそも若手として現場で活躍するスキルと、管理職としてチームマネジメントをするスキルは全く別物ですから、優秀な若手社員が管理する立場に立ってからも、そのまま優秀であり続けるという保証はないのです。
それに、夫婦間や子育ての問題、子供の受験、年を取った両親のケアなど、ミドル世代は仕事以外にも気を配らなければならないことが多く、仕事以外の面での責任やストレスも増してきます。
体力の衰えにともない、仕事にかける情熱が若い頃よりも減ってしまい、いつの間にか「あのころのような活躍」が出来なくなってくるのは、ある意味仕方のないことなのです。
いくつになっても努力を怠らずに新しいスキルをどん欲に吸収できるミドルやシニアであれば、頼れる上司として部下にも慕われるでしょうが、現実的に難しいケースが多いのはこのような外的理由もあるのです。
しかし、給与を支払う企業にとってはこのような中年社員の割合増加は、経営上大きな問題となります。
バブル以降の若手採用控えの影響もあり、社内の年齢構成が逆ピラミッド型や逆ひょうたん型のアンバランスで頭でっかちになっている企業はかなり増えています。
ミドルやシニアの社員比率が高くなると、ITやAIなど新しい技術導入に伴う社内改革が遅れがちです。
そのような企業では停滞した雰囲気が蔓延し、さらにそれが原因で優秀な若手に避けられるような状況になってくるような悪循環は、企業にとって死活問題と言えるでしょう。
雇用する企業にとって、労働年齢の高齢化は実に頭の痛い問題です。
そのため社内組織再構築のために、黒字リストラなどにより人員の新陳代謝をはかろうとする企業が近年増えているのです。
では会社のお荷物にならず、現役感をもって働き続けるために私たちはどのようにふるまうべきなのでしょうか。
会社員50年時代をいかに生き抜くべきか
■あなたとあなたの家族を守るのは誰?
私たち現役世代は、20代前半から働き始め、70歳でリタイヤをするまでに約50年の会社員生活を送ることになります。
一方で世の中の動きはとても早く、社会は目まぐるしく変化し続けています。
「企業の平均寿命」は20年余りと言われていますし、10年前には世の中に存在していなかった仕事が憧れの職業のトップにランクインし、子どもたちの65%は今は存在していない職業に就くだろうと言われています。
そんな時代に生きながら、50年間同じキャリアで会社員人生を全うできる人は果たして、どれだけいるのでしょうか。
営業一本で生きてきたのでそれ以外の仕事はできない。
いまさらリモートワークと言われても、そもそもIT苦手だし。
もう歳だから、新しいことは覚えられない。
ミドル世代からは、そんなぼやきが聞こえてきそうです。
もちろん一つのキャリアに会社員人生のすべてを捧げることを全否定するわけではありません。
しかし社会情勢が刻々と変化していくなかで、社員を守ってくれるはずの会社の経営が揺らいだ時、果たしてあなたの人生を守ってくれるのは誰でしょう?
盲目的に滅私奉公をして、いざというときに守ってくれるだろうと信頼していた会社自体が、定年前に無くなってしまっては、あまりに悲惨で泣くに泣けません。
一つのキャリアに人生のすべてを捧げるということが高いリスクを伴う行為であることに、早く気づくべきです。
■人生100年時代のライフサイクル
人生100年とすれば折り返しは50歳。また、会社員人生50年を考えたときに、こちらも折り返しは50歳です。
私たちの親世代の人生のライフサイクルは
教育 →仕事 →リタイア後の余生
の3つに区分けできたと言えるでしょう。
これは人生を、25~30年を1スパンとしてとらえた考え方です。
では人生100年時代の賢い生き方はどうなるでしょうか。
私たち世代のライフサイクルは
教育 →第一のキャリア →第二のキャリア →リタイア後の余生
の4区分の発想を持つことが重要なポイントになります。
そして第一のキャリアと第二のキャリアのシフトに最も適した時期は、40代です。
40代という年齢は、20代30代でがむしゃらに経験を積んできたことが、開花する時期です。経験に裏付けされた自信と誇りをもち、職場でも責任を持ったポジションにつく年代です。
つまり40代は、第一のキャリアの結果が形になり実を結び始めた時期と言えます。
しかし役職が上がったとか、給与が上がったとかいう事実に安心しきって、人生勝負がついたとか、俺も勝ち組だな、などと考え始めているとしたら要注意です。
もし、これからは楽が出来るなとか、若手に仕事を任せて手を抜こう、などという気持ちが芽生え始めたら、その時点であなたの成長は確実に止まります。
逆にこの時期に、まだまだ新しいことにチャレンジしていこうと、ポジティブな発想を持ち、実際の行動に移せるかどうか。
これが第二のキャリアを充実したものにできるかどうかの、大きな分かれ目となるのです。
自分の器を決めてしまうと成長が止まる
「40歳定年制」は、安穏としている40代中間管理職に警鐘を鳴らし、あなたの後半人生をより一層充実させるための重要なメッセージだと私は考えます。
これまでの前半人生を総括して、いったん結論を出す。そして気持ちを切り変えて、まだまだ続く残り半分の人生をどのように過ごすかを真剣に考え直すのが、40代の有益な過ごし方と言えるでしょう。
そしてそれは、50代から始めるのでは遅いのです。ましてや60歳65歳から全く別の道を探そうと思っても、残念ながら上手くいく可能性は低いでしょう。
体力・気力に余裕があり、新しいことを吸収するだけの柔軟性を持ちあわせている40代のうちに、残りの人生を考え準備を始める。それがとても大切なのです。
今の会社に満足しているのであれば、社内でのキャリアシフトを考えてみても良いでしょう。これまでのキャリアを生かしつつ新たな経験を積み、他の人にない強みを身に着けるチャンスです。同じ社内で実現できればとても幸せなことです。
もし今の会社に満足できない部分があるのならば、学びなおしでも良い、副業のタネ探しでも良い、本業以外の収入の道を模索するだけでも見聞を広めるのに有効です。
行動力があれば、実際に転職活動を始めてみても構いません。本当に転職しなくても、転職サイトなどで情報を収集して業界の動向を分析してみたり、自分のキャリアの棚卸をしながら本当の自分の強みや可能性を改めて見つめなおすことは大変有意義です。
40代で自分のキャリアはこれだと結論を出してしまうことは、自分の器を自分で決めてしまうことになります。そのような思い込みはとても怖いものです。
一度自分で決めてしまった器は、自分の力でそれ以上大きく育てることは決してできません。
自分自身の経験・スキルを客観的に見つめなおし、さらなる成長のため新しいことに挑戦すること、柔軟な発想をもって人生に向かい合う気持ちを持つことが、残り半分の人生も賢く生きるための大切な考え方なのです。
まとめ
40代はこれまでの前半人生で学び身に着けた多くの知識やスキルを整理し総括する時期です。
これまでの前半人生を一度振り返り、今後の人生をまた一から築きあげていくくらいの心意気で真剣に人生に向き合うこと。
つまりこれが「40歳定年制」の言葉の真実といえます。
40代は、後半人生のプランをたて、道筋を明確にするためのとても大切な準備の時期なのです。