「マインドセット」という言葉はビジネスシーンでよく聞かれるようになりましたが、この言葉は何を表しているのでしょうか。
今回は、ビジネスだけではなく人生の成功をも大きく左右するマインドセットについて、詳しく解説していきたいと思います。
マインドセットとは
マインドセット(mindset)とは、自身の習性として根付いた物の見方や考え方です。
あなたがこれまでに受けてきた教育や、育った環境、経験、時代背景や先入観などから、長年の間にあなたの心の中に固定された「思考様式」や「心理態度」ともいえます。
これは「考え方の癖」のようなものですが、自分の能力に自信を持っている方や年配者ほど、マインドセットを切り替えるのは厄介なことなのです。
2つのマインドセットを理解する
「マインドセット」には、良い影響を与える「グロース・マインドセット」と、あまり良くない影響を与える「フィックスト・マインドセット」があります。
グロース・マインドセット(成長型マインドセット)
growth(グロース)は「成長」「発展」を意味しますが、このマインドセットを持つ人は、向上心を持ち、粘り強く努力を続けることのできる性質です。
たとえ失敗したとしてもそれを糧にして立ち直る、ポジティブな考え方です。
フィックスト・マインドセット(停滞型マインドセット)
fixed(フィックスト)は「固定する」「据え付ける」を意味しますが、このマインドセットを持つ人は、「人の能力は固定的で努力しても変わらない」という考え方を抱きがちで批判や失敗を恐れて挑戦を避ける傾向があります。

キャロル・S・ドゥエック教授の研究
スタンフォード大学の心理学者キャロル・ドゥエック(Carol Dweck)は、小学生を対象に何が成功を左右するのかを研究していましたが、そこで彼女は、なぞなぞや難しい問題に直面した時に成果を上げる子どもたちと、成果が出にくい子供たち、それぞれのグループの共通点を見出したのです。
なぞなぞや難しい問題が得意な子どもたちは、解けない問題に直面しても自分は失敗しているとは考えず、楽しみながら問題にチャレンジし、課題をクリアしていました。
一方成果が出ないグループの子どもたちは、難しい問題をみると、自分には無理だと考えて、すぐにあきらめてしまうのです。
ドゥエックらは、成長型マインドセットを持つことは、学校だけではなく、職場でも成功をもたらすことを研究しました。
一つの事柄に向かうのでも、物事への考え方や感じ方次第で、取り組み姿勢だけでなくその結果にも大きな差が出るということがわかるでしょう。
成長型マインドセットを意識すると、意欲的な行動を促すことができ、学びの機会やビジネスシーンにおいて、スピード感を持った成長と目標達成が可能となります。
マインドセットを改善する、5つのポイント
それでは、停滞型マインドセットを持つ人が成長型マインドセットに変わるためには、どのようなことをすればよいのでしょうか。
① 自分のマインドセットの弱点を意識する
まずは、自分のマインドセットが2種類のうちどちら寄りの傾向であるかを自覚しましょう。
多くの人は成長型マインドセットと停滞型マインドセットの両方持っていますが、自分の不得意な分野において停滞型マインドセットとなっている場合が多いものです。
たとえばビジネスの場面で、ついついチャレンジを避けてしまったり、判断を先送りしてしまう場面があった場合、どのようなケースかを思い出してみましょう。
これは自分の不得意分野と向き合う内省の作業のため難しいですが、自分のマインドセットの傾向と弱点を自覚し、自分の成長を阻害する悪しき思考様式を理解することが大切です。

② 悩まずに、すぐ行動する
停滞型マインドセットの方は、問題を先送りにする傾向があります。
しかしビジネスにおいては相手を待たせない、すぐに行動を起こすことはとても重要です。そのような行動様式が身についている人は周りにも頼りにされます。
難しい課題や苦手分野に直面しても、難しいなぁとかいやだなぁなどとあれこれ悩み考えるよりも、すぐに行動に移したり誰かに相談したほうが、案外すんなり解決方法が見つかったりするものです。
停滞型マインドセットから成長型マインドセットへと変えたい場合、何事もすぐに行動に移すことを意識しましょう。
そしてそれを当たり前のこととして、あなたの「習慣」にしてしまうことが大切です。
③思い切り、高い目標を設定する
停滞型マインドセットを切り替えることは、あなたの悪しき心理態度を崩すことでもあります。
そのために有効な手段は、具体的な目標を設定することです。しかも高い目標が良いでしょう。
努力すれば達成できそうな目標を設定すると、ひとはそこへ到達するために、どうしても成果を刻んでしまいがちです。
しかし思い切り高い目標を設定すれば、それに向かっているうちに当初の目標は軽々とクリアしてしまうものです。
④ 成長型マインドセットを演じる
停滞型マインドセットが強い人は、同じような思考を持つ人とばかり付き合っていないか考えてみてください。
ひとは周囲の環境や人間関係の影響を受けやすいものです。
少しずつでも成長型マインドセットを持つ人と関わりを持つよう努めてみましょう。
成長型マインドセットを持つ人をみつけたらその行動様式を真似て、自分もその人と同じように振る舞い思考するように意識してみるのです。
成長型マインドセットを持つ人を演じ続けることで、あなた自身も次第にその人と同じ行動や発言が身についてきます。
そして次第に周囲の人も、あなたのことをポジティブで良い影響を与えてくれる、組織にとって重要な人物であると認識するようになります。
⑤ 新たな価値観をインプットする
マインドセットを変えるには、読書によるインプットを促すことが大変有効です。
最初は自分の好きなジャンルの本からで構いません。
読書によって、これまで知らなかった新たな知識を獲得したり、成功者のとおってきた道筋を追体験することで経験の幅を広げ、あなたの中に新しい価値観や思考手段を構築することができます。
そのことが、あなたの固定概念を打ち崩すことにつながります。
さらに読書によって得た新たな知識や発見を手帳などにメモし、アウトプットする習慣をつけるとなお良いでしょう。そしてそのメモを何度も繰り返し見て、常に意識してください。
何度も繰り返しメモを見ることによって新たな知識を脳に定着させ、また成功者の体験がまるで自分自身の経験であるかのように脳に意識させるのです。
ビジネスリーダーに求められるマインドセット
プラスの影響を持つ成長マインドセットは、個人だけではなく組織や企業の成長のためにも大切な姿勢です。
ビジネス現場においては、リーダーの「マインドセット」は、チーム全体に伝わり、チームの生産性にも大きな影響を与えます。そのため、ビジネス・リーダーは優れたマインドセット持つことが極めて重要となります。
リーダーのマインドセットは、自身のためだけではなく組織のためにも大きな意味を持つ

成長型マインドセットを持つリーダーは、ポジティブな空気をチーム内に伝播し、意見を言いやすい空気をつくります。
常に前向きに挑戦する環境で部下を育て、課題解決力の高い人材への育成を促してくれることでしょう。
また優れたリーダーを目指すあなたは、部下のマインドセットに注意し、停滞型マインドセットの部下に対してはそのネガティブな思考様式を指摘するだけではなく、部下が自発的に改善するような声掛けや指導を行うように心がけましょう。
そのためには、以下のことを心がけるとよいでしょう。
部下のマインドセットを高めるために
● 成果や能力を評価するのではなく、部下の努力を評価する。
● 小さな成功体験を積み重ねさせる。
まとめ
成長マインドセットを持つことはあなた自身の成長に大きく貢献します。
さらにあなたが経営者や人事担当の方なら、スタッフのマインドセットを理解し、グロースマインドセットの醸成を研修に取り入れてみたりすることをオススメします。
マインドセットについての理解をもち日頃から意識することで、あなた自身や組織の成長を実現してください。