モチベーションの低い部下が変わるとき。管理職が実践した「やる気を引き出す」マネジメント

部下のやる気を引き出すマネジメント チームマネジメント

「何を言っても部下にやる気が感じられない」 「以前は優秀だったのに、最近は仕事に対して消極的になっている」 「管理職として、どう働きかければよいのだろうか」

部下のモチベーション低下は、多くの管理職が直面する悩みです。熱心に声をかけても反応が薄く、仕事を任せても主体的に動いてくれない。そんな状況が続けば、上司自身も疲弊してしまいます。

しかし、部下のやる気が低下したとき、必要なのは単に叱咤激励することではありません。本人が意欲を失った理由を理解し、能力を発揮できる役割や環境を整えることが重要です。

今回は、実際に公開されている管理職の体験談を参考に、部下のモチベーションを高めるために上司ができることを考えてみます。

1.大きな役割を失い、やる気をなくした元エース課長

参考になるのが、営業部長の遠藤新太郎氏がnoteで公開した「やる気を失った元エース課長を『Will・Can・Need』で劇的に復活させた話」です。

同氏の記事では、営業担当者として優秀だった課長が、仕事への意欲を失い、再び活躍できるようになるまでの経緯が紹介されています。

この課長は、プレイヤーとして非常に優秀で、効率よく仕事を処理し、営業成績を上げる能力を持っていました。しかし、長年担当していた大きな仕事が入札の結果によって失われると、徐々にやる気をなくしていきました。

その仕事は、本人の業務量の約半分を占めるほど重要なものでした。

仕事を失ったことに加え、以前の部下が評価されていることや、自分自身が評価されていないと感じることも、意欲低下の背景にあったと上司は考えました。

新しい仕事を与えるだけでは、本人のモチベーションは回復しませんでした。

ここから得られる教訓は、仕事量を確保することと、本人が仕事に意義を感じることは別だということです。

上司は、本人が何をしたいのか、何が得意なのか、会社として何を期待しているのかを改めて整理することにしました。

2.「やりたいこと・できること・求められること」を重ね合わせる

上司が活用したのが、Will・Can・Needという考え方です。

  • Will:本人がやりたいこと
  • Can:本人ができること、得意なこと
  • Need:会社や組織が求めていること

本人に「もっと頑張れ」と求めるのではなく、この3つが重なる領域を探します。

上司は、会社として期待する役割を複数提示しました。そのうえで、本人が自分の得意分野や関心に合う役割を選び、目標を設定できるようにしました。

すると、課長は営業支援ツールの管理・改善を担当することに興味を示しました。

もともとExcelのマクロを組んだり、社内システムを改善したりすることが好きだったためです。

上司はその目標を承認し、営業支援ツールの担当者として仕事を任せました。

すると、本人は自らツールを使い込み、システム会社との打ち合わせや改善に積極的に取り組むようになりました。各拠点の管理職に使い方を説明するなど、行動範囲も広がっていきました。

結果として、本人が意欲を取り戻しただけでなく、会社全体で営業支援ツールを活用する動きも活発になったといいます。

この事例のポイントは、上司が無理にやる気を注入したのではなく、本人の興味と能力を生かせる仕事を見つけたことです。

3.部下を信頼して仕事を任せる

もう一つ参考になるのが、ログミーBusinessが紹介した、上司から「任すわ」と言われた経験を持つビジネスパーソンの体験談です。

記事では、若手主任時代に上司から仕事を任されたことが、主体的な働き方につながった経験が取り上げられています。

上司が仕事を任せることは、単に作業を委ねることではありません。「あなたならできる」と信頼を示すことにもなります。

ただし、任せることと放置することは違います。

目標や期待する成果を共有し、必要な支援を行いながら、仕事の進め方には本人の工夫や判断を生かせる余地を残すことが重要です。

細かく指示しすぎると、部下は自分で考える機会を失い、指示を待つようになることがあります。

部下の主体性を引き出したいのであれば、上司がすべての答えを与えるのではなく、本人が考え、決め、行動できる環境を整える必要があります。

4.モチベーションが低い部下に、管理職ができる3つのこと

ここまでの事例から、管理職が実践できる働きかけを3つに整理します。

① まず、やる気が低下した理由を聞く

部下の意欲が低いからといって、怠けているとは限りません。

仕事の目的が見えない、成果を評価されていない、自分の強みを生かせない、業務負担が大きすぎるなど、さまざまな理由が考えられます。

「もっと頑張れ」と伝える前に、本人の話を聞いてみましょう。

例えば、次のような質問が考えられます。

  • 最近、仕事で負担に感じていることはある?
  • 今の仕事で、もっと工夫してみたいことはある?
  • どんな仕事なら、自分の強みを生かせそう?

上司が原因を決めつけずに話を聞くことで、これまで見えていなかった課題が明らかになる可能性があります。

② 本人の強みを生かせる役割を用意する

苦手な仕事ばかりを任されていたり、得意な仕事を失っていたりすれば、意欲が低下することがあります。

本人が得意なこと、興味を持っていること、組織が必要としていることを整理し、役割を調整できないか検討してみましょう。

重要なのは、本人の希望をすべて受け入れることではありません。組織の目標との接点を探すことです。

得意な仕事を任せることが、本人の成長やチームへの貢献につながるなら、双方にメリットがあります。

③ 小さな成果を認め、次の行動につなげる

モチベーションを高めるためには、努力や工夫が成果につながったという実感も重要です。

結果だけを評価するのではなく、改善に向けた行動や、新しいことに挑戦した姿勢にも目を向けましょう。

例えば、「よく頑張った」だけでなく、「今回の改善で作業時間が短縮できたね。工夫した点がよかった」と具体的に伝えます。

何が評価されたのかが明確になれば、本人も自分の強みや成長を認識しやすくなります。

5.部下のやる気を変えるのは、上司の熱意だけではない

部下のモチベーションが低いとき、上司はつい「どうすればやる気を出させられるか」と考えます。

しかし、管理職が一方的に意欲を高めようとしても、うまくいくとは限りません。

今回紹介した体験談から考えられるのは、本人の意欲を妨げている要因を理解し、能力を発揮できる役割を見つけ、適切な裁量を与えることの大切さです。

もちろん、すべての部下が同じ方法で変わるわけではありません。仕事以外の事情や、職場環境そのものに問題がある場合もあります。

だからこそ、上司は「やる気がない部下」と決めつけるのではなく、「この人が力を発揮できる条件は何だろう」と考える必要があります。

部下のモチベーションを高めることは、上司が気合いを注入することではありません。本人が仕事に意味を見いだし、自分の強みを生かし、成果を実感できる環境を整えることです。

管理職に求められるのは、部下を無理に動かす力ではなく、部下が自ら動きたくなる条件をつくる力なのではないでしょうか。


参考資料

  • 遠藤新太郎「やる気を失った元エース課長を『Will・Can・Need』で劇的に復活させた話」noteで読む
  • ログミーBusiness「部下に“丸投げ”と思われない上司の姿勢 モチベーションを引き出す誘導型のマネジメント術」記事を読む

※本稿は公開された体験談を参考に、管理職向けの考察を加えて再構成したものです。個別の事例の経緯や成果は、各原記事をご確認ください。